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出産育児支援制度解説

出産・育児関連の制度解説

出産は奇跡です。子供の誕生、健やかな成長は、当たり前のことではありません。妊婦さんや子供を育てる親たちは、不安なことがいっぱいです。
 
当事務所では、安心して妊娠・子育てができる職場づくりを支援していきたいと思っています。ここでは関係する労働・社会保険制度の概要を解説します。社内規定の整備などをご検討されている事業主様からのご相談も、お待ちしております。

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注)
掲載情報は2018年8月時点の法令をもとにしています。
概略的な解説ですので、詳しくは法令・行政機関のパンフレット等をご確認ください。

制度図解

出産・育児支援制度
ピンク色の文字は女性のみに適用される制度を示す
 
いくつかの法令が相互に補完して、一連の制度を構築しています。
横断的に見ると対応する制度が少し分かり易くなります。
以下、重要なポイントを解説します。
 
■休業を取得できる ~産前産後休業と育児休業~
法律で保証されている制度で、産後8週は原則就業禁止、産前休業と育児休業は 請求によって取得ができます。
 
■所得保障がある ~出産手当金と育児休業給付金~
休業中は 無給でもよいことになっているので、無給の場合には収入を失ってしまいます。このときの所得保障として、一定の要件に該当すれば、給与の3分の2相当額が日額で給付されます。※育児休業給付金は181目からは2分の1相当
 
■社会保険料が免除になる ~健康保険・厚生年金保険~
産前産後休業・育児休業期間中は、健康保険と厚生年金保険の保険料が、事業主負担分・被保険者負担分ともに免除されます。保険給付が受けられない、将来の年金額が減額されるといった不利益は生じません。
 
■年金額は下がらない ~養育期間特例~
3歳に達する前の子を養育している間は、労働時間の短縮措置や能率低下などにより給与水準が下がっても、養育開始前の標準報酬月額で年金を計算する特例があります。
 
注意しなければならないのは、一部の制度は要件を満たす必要があること、保険給付や保険料免除などの制度は、事業主と本人が 適時・適切な手続をしなければ利用できないことです。

①妊産婦の保護(労働基準法、男女雇用機会均等法)


■坑内労働の制限
 妊娠中の女性及び坑内業務に従事しない旨を申し出た産後一年を経過しない女性
 
■妊娠、出産、哺育等に有害な業務の制限
 妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性
 
■軽易な業務への転換
 妊娠中の女性が請求した場合
 
■法定労働時間外労働、法定休日労働、深夜業の制限
 妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性が請求した場合
 
■不利益取り扱いの禁止

  • 婚姻、妊娠、出産を退職理由として予定する定めの禁止
  • 婚姻、妊娠、出産又は産前産後休業を請求したことなどを事由とする解雇の禁止
  • 妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性になされた解雇の無効

 
■職場における雇用管理上の措置
 マタハラを防止、または対処するための措置
 
■健康管理に関する措置

  • 母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるための時間確保
  • 指導事項を守れるよう勤務時間の変更、軽減等

②育児時間(労働基準法)


生後満1年に達しない生児を育てる女性は、休憩時間のほかに、1日2回、少なくとも30分、育児のための時間を請求することができます。(ただし所定労働時間が4時間以下の場合は1日1回)
 
休憩時間と違い、労働時間の途中に与える必要はなく、始業又は終業時刻に合せて実質的な労働時間の短縮になっても問題はありません。
育児時間を請求された場合就業させることはできませんが、その時間の有給・無給は問われません

③産前産後休業(労働基準法)


■産前休業
6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)に出産予定の女性が請求した場合に取得可。請求があった場合は就業させてはいけません。
 
■産後休業
産後8週間(=56日)を経過しない女性の原則就業禁止。ただし産後6週間が経過した場合は、女性本人が請求し、かつ医師が支障がないと認めた業務については就業可、本人の希望がなければ原則通り産後8週間は休業です。
※出産日が予定日とずれた場合、出産当日は産前休業に含まれ、産後休業は翌日から起算します
 
■解雇制限
産前産後休業中及びその後30日間は、天災地変など不可抗力によるやむを得ない事情がない限り、解雇禁止。

④出産手当金(健康保険法)


産前産後休業中の所得保障として、給与の3分の2相当額が給付されます。
健康保険に加入する大きなメリットのひとつと言えます。
支給額は、支給開始日の属する月以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均×1/30×2/3(日額)となります。ポイントは

  • 出産手当金は出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の日後56日までの間で、労務に服さなかった期間について支給される
  • 労務不能である必要はなく、単に休業していればよい
  • 待期期間はなく、初日から支給される
出産手当金イメージ

 
休業期間中に報酬を受けたり、障害年金の受給があると併給調整され、出産手当金の額が上回る場合のみ差額支給されます。
申請に当たっては事業主による休業日と報酬額の証明、医療機関による出産の事実の証明が必要です。

申請に必要な情報

 
継続給付
職場を退職した場合でも、本来受けられるはずであった期間、継続して出産手当金を受けられる場合があります。要件は以下のとおりです。

  • 被保険者の資格喪失日の前日まで、引き続き1年以上切れ目なく被保険者であった
  • 資格を喪失した際に、現に支給を受けているか、又は要件を満たし受け得る状態にあった

在職中の期間は事業主の証明を得ることが必要ですが、在職中に保険者に対する申請手続が済んでいる必要はありません。

⑤出産育児一時金(健康保険法・国民健康保険法)


出産費用の給付です。

  • 給付額:40万4千円(産科医療補償制度に加入する医療機関での出産は42万円)
  • 原則として医療機関が保険者に直接請求する直接支払制度によって支給される
  • 妊娠4か月(85日以上)の出産であれば、生産、死産、流産、人工妊娠中絶を問わない
  • 被扶養者の出産の場合には家族出産育児一時金が支給される(内容は同じ)
  • 国保にも同様の制度がある

 
資格喪失後も受けられる
以下の要件を満たすと、最後の保険者から支給を受けることができます。

  • 1年以上被保険者であったこと
  • 資格を喪失した日後6か月以内に出産したこと

⑥育児休業(育児介護休業法)


■原則的な育児休業 ~1歳まで~
日々雇用される者を除き、1歳未満の子を養育する労働者は、子が1歳に達するまでの間休業を請求することができます。

  • 配偶者の職業や収入は関係なく、同時に取得が可能
  • 開始日と終了日を予定して申出を行い、利用は原則1回まで、最長1年間(女性は産後休業期間と合わせて1年間)
  • 事業主は休業取得を拒否することができない

 
ただし、以下の労働者については、労働者過半数代表との労使協定で定めた場合に限り除外可能。

  • 引き続き雇用された期間が1年に満たない者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者
  • 休業申出日から1年(※)以内に雇用関係が終了する者

 ※1歳6か月及び2歳までの育児休業(後述)については6か月
 
また、有期契約労働者が育児休業を取得するには以下の要件を満たすことが必要

  • 引き続き雇用された期間が1年以上
  • 養育する子が1歳6か月に達するまでに労働契約(更新される場合には更新後の契約)が満了することが明らかでないこと

 
■配偶者と協力して取得する場合の特例 ~1歳2か月まで~
両親の協力した育児と、パパの育休取得を促進する制度です。
 
パパママ育休プラス
育児休業している配偶者と同時かそれ以後に育児休業をする場合に、1歳2か月になるまでの間に利用期間が拡張される制度です。(パパ・ママそれぞれの休業可能期間は1年間)
要件:

  • 配偶者が子が1歳に達する日以前において育児休業を取得している
  • 本人(利用期間が拡張される側)の育児休業開始日が、子の1歳誕生日以前である
  • 本人(利用期間が拡張される側)の育児休業開始が、配偶者の育児休業開始と同時か、それ以降の日であること
パパママ育休プラス

 
パパ休暇
ママの産後8週間以内の期間中に、パパが育児休業を取得・終了していること。この要件を満たすと、原則1回までとされている育児休業を、子が1歳2か月に達するまでの間にパパが再度取得できるようになる制度です。

パパ休暇

 
■育児休業の延長 ~1歳6か月、さらに2歳まで~
次の要件を満たす場合に認められます。

  • 1歳(2歳まで延長の場合は1歳6か月)に達する日に、配偶者か本人のどちらかが育児休業中であること
  • 保育所に入所できない、養育を行う予定だった配偶者の死亡、病気、離婚などで保育が困難になった等の、休業が必要と認められる特別の事情がある場合

有期契約労働者が2歳まで延長する場合には、1歳6か月到達時点で以下の要件を満たすこと

  • 引き続き雇用された期間が1年以上
  • 子が2歳に達するまでの間に労働契約が満了するものでないこと

⑦育児休業給付金(雇用保険法)


育児休業の取得を促進し、雇用を継続できるようにするための制度で、育児介護休業法に規定する育児休業を取得している期間中、所得保障として給付を受けられます。

育児休業給付金概要

 
支給要件

  • 休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上あること
  • 支給単位期間中の就業した日が10日以下(超える場合は就業時間が80時間以下)

みなし被保険者期間とは、休業開始日前から1月ずつ遡った各期間のうち、賃金支払い基礎日数が11日以上あるものです。
支給単位期間とは、休業開始日から1月ずつに区切った期間を言います。この支給単位期間ごとに支給されます。
 
給付金額
休業開始時に算定される賃金日額(上限額あり)に、
180日目までは100分の67
181日目からは100分の50
を乗じた額×支給日数となります。支給日数は支給単位期間毎に30日、休業終了日の属する支給単位期間(端数)に限りその期間の日数となります。
 
賃金との調整
支給単位期間中に賃金が支払われた場合、賃金と育児休業給付金の合計額が、休業開始時賃金日額×支給日数×100分の80以上となる場合には支給調整されます。

報酬との調整イメージ

受給手続き
事業主を経由して事業所を管轄するハローワークに申請します。申請期限は支給単位期間の初日から起算して4か月を経過する日が属する月の末日までです。

⑧社会保険料免除(健康保険法・厚生年金保険法)


産前産後休業中及び育児休業中の健康保険・厚生年金保険料は、事業主が申出書を提出することにより、事業主負担分・被保険者負担分ともに免除となります。
出産手当金とは異なり、出産日が早まった場合には遡って適用になる場合があります。

社会保険料免除イメージ

 
免除期間中の取り扱い

  • 健康保険…通常通りの保険給付を受けられる
  • 厚生年金…保険料納付済期間(年金に影響なし)

 
被保険者である法人役員の保険料

  • 産前産後休業中の免除…適用
  • 育児休業中の免除…適用されない(育児介護休業法上で育児休業の対象になっていないため)

 
手続
産前産後休業期間中に事業主が年金事務所に申出書を提出します。
出産日や終了日に変更が生じる場合は変更(終了)届の提出が必要です。
 
雇用保険料
雇用保険料は実際に支給される給与をもとに計算しますので、休業期間中が無給であれば、雇用保険料も0円(なし)ということになります。

⑨休業終了時の標準報酬月額改定


休業明けは、所定労働時間の短縮措置などによって、給与水準が低下する場合があります。健康保険・厚生年金保険の保険料は、随時改定に該当するような2等級以上の給与変動がない限り、定時決定された標準報酬月額をもとに計算されますので、給与は下がっても保険料はそのままで負担が大きくなってしまいます。
 
そこで次の定時決定を待たずに、休業終了後の3カ月間の給与をもとに、1等級以上の変動があればその翌月から標準報酬月額を改定し、保険料負担をいち早く軽減できるのが本制度です。

終了時改定のイメージ

 
ただし、健康保険給付も減額改定された標準報酬月額をもとに行われる(傷病手当金の給付額などが低下する場合がある)ため、被保険者本人の意思決定が必要な手続きとなります。
年金額は、後述の養育期間特例によって不利になることはありません。

⑩養育期間中の標準報酬月額の特例措置(厚生年金保険法)


3歳未満の子を養育する期間について、標準報酬月額が養育開始月の前月よりも下回った月について、将来給付される年金額の計算上は、養育開始月の前月の標準報酬月額をみなし適用する制度です。
 
就業と育児の両立のため、養育開始前よりも給与が下がったときに

  • 保険料の計算:下がった標準報酬月額をもとにして負担軽減
  • 年金額の計算:従前の標準報酬月額を用いて、年金が下がらない

という特例措置になります。
対象期間中であれば給与低下の理由は問わずに適用されます。ただし適用を受けるには本人同意の上申出書の提出が必要です。

養育期間特例のイメージ

⑪所定労働時間の短縮、所定外労働の制限(育児介護休業法)


所定労働時間の短縮
3歳に満たない子を養育する場合に申出可、1日の所定労働時間を6時間以内とする措置が適用されます。
労使協定による除外要件

  • 引き続き雇用された期間が1年未満
  • 1週間の所定労働日数が2日以下
  • 業務の性質、実施体制に照らして短縮措置が困難な業務に従事する場合

 
所定外労働の制限
3歳に満たない子を養育する場合に申出可、所定労働時間を超える労働が制限されます。(1か月以上1年以内の期間を指定する)ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りでない。
労使協定による除外要件

  • 引き続き雇用された期間が1年未満
  • 1週間の所定労働日数が2日以下

⑫時間外労働、深夜業の制限、子の看護休暇(育児介護休業法)


小学校就学の始期に達するまでの子について、以下の措置を請求し、又は申し出ることができます。
 
時間外労働の制限
法定時間外労働を1か月につき24時間以内、1年について150時間以内に制限(事業の正常な運営を妨げる場合を除く)
除外要件

  • 引き続き雇用された期間が1年未満
  • 1週間の所定労働時間が2日以下

 
深夜業の制限
深夜時間帯の労働を制限(事業の正常な運営を妨げる場合を除く)
除外要件

  • 引き続き雇用された期間が1年未満
  • 深夜において状態として子を保育できる同居の家族等がいる場合
  • 1週間の所定労働時間が2日以下
  • 所定労働時間の全部が深夜にある場合

 
子の看護休暇
負傷し、若しくは疾病にかかった子の世話又は子に予防接種・健康診断を受けさせるための休暇

  • 1年度当たり5労働日(対象となる子が2人以上いる場合は10労働日)
  • 1日の所定労働時間が4時間を超える場合は、半日単位の取得可
  • 有給/無給を問わない

労使協定による除外要件

  • 引き続き雇用された期間が6か月未満
  • 1週間の所定労働時間が2日以下

⑬児童手当(児童手当法)


中学校修了前の児童を看護し、生計を同じくする父母等に対して給付金が支給されます。

  • 所得制限があります
  • 住所地の市町村長の認定を受ける必要があります(役所に出生届を出すと案内されるはず)
  • 支給は認定請求した月の翌月から、事由消滅日の属する月まで
  • 月単位で支給されますが、毎年2月、6月、10月の3期に、前月までの分が支払われます
  • 1人当たり支給額(一般受給資格者の場合)
児童手当額

※第何子かは、18歳到達年度末までの児童について、そのうちの年長者から数えます
※所得が限度額を超える場合、一律5,000円の特例給付があります

⑭傷病手当金について


妊娠中の検診でなんらかの異常が診断され、長期に入院療養が必要となる場合があります。
この場合、私傷病による休職扱いとなり、その間は給与が支払われないケースが多いかと思われます。このとき、社会保険に加入している被保険者であれば、健康保険から傷病手当金の給付を受けることができます。
 
傷病手当金の概要

  • 給付額:給与の3分の2相当(日額)
  • 支給期間:支給開始日から1年6カ月以内の期間中に、要件に該当した日数分

※「180日分」の受給が保証されているわけではない

  • 休職中、給与が支払われる場合は併給調整される

 
傷病手当金の受給要件

  • 療養のため労務に服することができないこと

(例えば入院中や、自宅療養が必要と診断されたため働けない状態)

  • 継続3日間の待期期間を経過したこと(4日目から給付の対象)
  • 事業場の所定休日や公休日は、継続3日の待期期間に参入され、かつ、4日目以降の労務に服することができない期間中、給付の対象となる
  • 待期は同一傷病につき1回満たせば足りる

 
傷病手当金請求のポイント

  1. 在職中の期間について申請する場合、「休職した日」と「休職期間中の賃金」に関する事業主の証明が必要(申請書様式3枚目)。休職が長期に渡る場合、計算を簡便にするため給与の締め日に合せて、期間を区切って請求する場合がある。期間をどうするか確認するとともに、なるべく速やかに証明書を作成してもらう。
  2. 療養の事実について、療養担当者の証明書が必要(申請書様式4枚目)。病院の診断書窓口などで、①で確認した期間を指定して、用紙を渡して作成してもらう。通常有料で、数週間かかるときがある。本人が窓口に行けないときは、委任状が必要な場合があるので病院に確認する。
  3. 事業主の証明書と医療機関の証明書が出来上がったら、内容の整合性を確認して、申請書様式1・2枚目を記入して保険者に送付する。審査に時間がかかるので、すぐには支給されない。
支給申請に必要な情報

 
制度の理解を!
傷病手当金は社会保険に加入するメリットのひとつです。病気やケガで休職を余儀なくされたときに、所得補償が得られる大変有益な制度です。
しかし、権利の行使は本人の意思であり、請求しなければ自動的には給付されないのです。制度を知らなかった、ではもったいないことになります。
 
限度額認定証も忘れずに
高額療養費といって、その人の所得に応じて自己負担限度額を決定し、ひと月の医療負担額を軽減する制度がありますが、基本的に後精算のシステムのため一時的に大きな出費を伴います。
予め限度額適用認定証の申請を行い、医療機関に提示しておくことによって、立替払いが不要となります。長期入院などの高額な療養が見込まれる場合には、忘れずに申請しておきましょう。

運用支援のご相談

以上の制度を活用するためには、確実に 申請手続を行うこと、事業場で 運用規定を定めて、適切な対応をとることが必要となります。
 
当事務所では、各種手続の代行のほか、事業場における規定作成などの体制整備、周知啓発のための研修など、様々な角度から支援をさせていただきます。
 
育児支援制度の整備や利用促進を行うと、助成金の給付対象となる場合もあります。助成金や認定制度などのご提案もさせていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
 
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